• 2020.08.26

役員借入金、役員貸付金があるとどうなる?

スタッフの山田です。
 新型コロナ対策支援では特例融資などの施策が実行されていますが、要件に該当しないなどの理由で役員借入をした会社もあるのではないでしょうか?
今回は、役員借入金や役員貸付金がある場合の影響について考えてみます。(参考「会社と社長を元気にする税金のツボ」清文社)

1.役員借入金
 役員借入金は、会社が役員から資金を借りた場合や役員が立替えた会社経費が精算できなかった場合などに発生します。

(1)メリット
  役員借入金に対して支払利息を計上しなくても税務上問題になることはありません。個人である役員は、必ずしも営利を目的としないためです。
  また、金融機関からの借入に比べ、一時的・機動的な資金需要に対応できます。

(2)デメリット
  役員借入金を残したまま、その役員の相続が発生した場合、額面で評価され、相続税の対象となります。
というのは、役員借入金は役員側からは会社に対する貸付金になるからです。

(3)役員借入金を減らす方法
  ・役員報酬を減額して返済に充てる
    個人の所得税・住民税・社会保険料等が減額されますが、会社の経費も減ります。
  ・債務免除を受ける
    会社が赤字又は繰越欠損金がある場合に有効です。会社は債務免除益を計上することになります。
  ・DESを実行する
    DES(デッド・エクイティ・スワップ)といって、役員借入金を資本金に振り替える方法があります。
    役員の相続税の計算においては、貸付金ではなく有価証券として評価されます。

2.役員貸付金
 役員貸付金は、会社が役員に資金を貸し付けた場合や会社の資金で役員の個人的な支払いを行った場合などに発生します。

(1)メリット
  会社の資金が減少し、費用にもならないため実質的にメリットと言えるものはありません。

(2)デメリット
  会社は営利を目的としているため、役員貸付金に対して受取利息を計上する必要があり、それは課税の対象となります。計上しなかった場合は税務調査で指摘されます。
  金融機関は融資の際に、資金使途を重視します。決算書上に役員貸付金が計上されている会社に融資を実行する場合、そのお金が他の会社や個人に迂回融資されるのではないかという見方をします。
  また、役員貸付金が多い会社というのは、経理処理がどんぶり勘定になっているケースがあり、金融機関はその会社の事業継続に危機感を持つようです。
  役員貸付金については、役員報酬から返済するなど返済スケジュールを金融機関に説明することが必要です。

(3)役員貸付金を減らす方法
  ・役員報酬から返済する
    役員の手取額が減ります。
  ・役員が個人資産を売却などして返済する
    土地や建物など一定の資産を売却した場合は、売却益に所得税が課税されます。
  ・役員退職金で返済する
     役員の手取額が減ります。また、退職のタイミングまで役員貸付金が残ります。

 このように、役員借入金には一定のメリットがあるものの、役員貸付金にはデメリットが多く、減らすのにも困難が伴います。
 役員貸付金の発生原因には、会社と役員のお金の区分があいまいであることや費用の管理ができていないことが挙げられます。

 そのため、会社と役員のお金を区分する仕組みをつくり、経理業務を整理改善していく必要があります。
 そうすることにより、役員報酬などの固定費を見積もり、利益を出すにはいくら売上があればばいいのか?
逆に現在の売上のまま利益を出すには固定費をいくら削減しなければならないのか?といった利益計画の検討も可能になります。

 経理業務改善や、その先の利益計画、経営計画の策定は福島会計がお手伝いいたしますので、是非ご相談ください。

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