• 2016.12.21

税制改正大綱 事業承継税制の見直しについて

福島会計の小島です。

今月初めに政府与党が2017年度税制改正大綱を発表しました。

 

そもそも税制改正大綱とは何かというと、政府税調が作成する翌年の4月から施行する税制の改正案です。税制改正大綱は2月には法案として国会に上程され、3月に可決、4月から施行されることになります。簡単にいえば「国民の皆さん、来年の4月から税金がこう変わりますよ」という事前アナウンスのイメージです。

 

配偶者控除の年収制限の見直しなど、メディアでも話題になっていますが、今回注目したいのは法人の事業承継を円滑化する事業承継税制の見直しです。

 

後継者がおらず廃業を余儀なくされる中小企業が多いなか、二代目、三代目へ脈々と事業を承継できる企業はそう多くはありません。しかし、そんな恵まれた企業も自社株式の次世代への承継には苦労しています。高収益体質で、財務基盤が盤石な会社は当然ながら株式も高い評価となるため、高額の相続税・贈与税が課せられるためです。

 

今回の改正では、その株価の評価方法が見直されます。

非上場株式の評価方式の一つに上場企業の株価を基礎として算定する「類似業種比準価額」という方式があります。

「利益・配当・純資産」の3要素について、自社と上場企業を比べて評価する方式ですが、これら3要素の比重が「311」と利益が重視されるため、利益が高いほど株価も高く評価される仕組みでした。これでは努力して利益を出すほど事業承継がしにくくなってしまいます。

今回の改正ではこの比重が「111」となり、この点が解消されることになります。なお、配当や純資産の要素が大きい企業は逆に評価額が高くなる可能性もありますので注意が必要です。

 

また、株価算定の基礎となる上場株式の株価についても、直近3ヵ月と前年の株価に加え、新たに2年前の株価も加わります。これらのうち最も安い株価を基礎として計算できるため、昨今の上場企業の株価上昇の影響を抑えることができます。

 

さらに、後継者が取得した株式にかかる相続税または贈与税の納税が猶予される制度も適用要件が緩和されます。

 

日本の経済は中小企業が支えているといっても過言ではありません。しかしそんな中小企業の多くは、後継者問題や自社株対策などにより事業承継が進んでいないのが実情です。事業承継がネックとなって日本の活力が衰えることのないよう、さらなる制度の充実を期待したいです。

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