• 2022.06.01

従業員の資格取得費用等を負担した場合の取り扱い

スタッフの原田です。

 

コロナ禍という状況が続くなか、さらに円安、物価上昇の影響もあり、中小企業を取り巻く環境はますます厳しいものになっています。

厳しい状況を乗り越えるために優秀な人材を確保、成長させることが重要と考えている企業がこれまで以上に増加しており、人材を確保するためにも研修や資格取得をサポートすることを検討している企業が増えているようです。

ただ、仕事に関係があるからといってすべてが研修費等の会社の経費になる訳ではありませんので注意が必要です。

 

1.資格取得のためにかかった教材費やセミナー代などは経費にできるのか?

 

ポイントとしては下記の2つあげられます。

・原則、業務に直接関係ある資格取得費用や研修費用は経費にできる

・医師や弁護士等の個人に帰属する国家資格などは経費にできない

 

それぞれについて解説していきます

 

(1)業務に直接関係ある資格

業務に直接関係のある資格の取得にかかった費用であり、研修費等の費用が高額すぎないものであれば経費になります。

 

 ◆所得税法基本通達37-24 

(技能の習得又は研修等のために支出した費用)

業務を営む者又はその使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているものを含む。)が当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額は、当該習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り、必要経費に算入する。

出典:国税庁HP

 

さらに国税庁は、資格取得費用を経費にする場合、条件を以下の3つとしています。

◆№2588 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき

①会社などの仕事に直接必要な技術や知識を役員や使用人に習得させるための費用であること

②会社などの仕事に直接必要な免許や資格を役員や使用人に取得させるための研修会や講習会などの出席費用であること

③会社などの仕事に直接必要な分野の講義を役員や使用人に大学などで受けさせるための費用であること

出典:国税庁HP

 

例えば、工場で働く人が業務を行うために必要な「危険物取扱者」の取得費用や飲食店の調理場に従事する人の「調理師免許」の取得費用は会社の経費となります。

 

 

(2)個人に帰属する国家資格などは経費にできない

 

個人に帰属する資格費用とは下記の内容となります。。

・独占業務を行える国家資格の取得費用

・独立開業が可能な資格の取得費用

・国家資格の取得のための大学などの学費

医師や弁護士等といった国家資格は、資格取得者だけが行える独占業務となります。そのため取得した個人のメリットが大きいといえるため、基本的に取得費を経費にできません。

その他にも接骨院を営む事業者が、柔道整復師の資格を取得するために専門学校に支払った学費や宅建業の開業にあたってかかった宅地建物取引主任者の取得費などは経費にはできません。

 

2.会社が負担すると給与課税

 

直接業務に関係ない資格や研修、上記のような国家資格の取得のために支出した場合にはその個人に対する給与課税となります。

 

例えば、会社の経理担当者が税理士資格を取得し、その費用を会社が負担した場合には、研修費等といった単純な経費ではなく、その経理担当者への給与となります。

給与となっても会社としては経費になりますが、従業員個人からみるとその分だけ税金や社会保険料の負担が増えてしまいます。

ただ、個人の税金等の負担が増えてしまっても、元々個人で資格取得費用等を支払う予定であれば損をする訳ではないので、当事者間で合意ができていれば問題はありません。

 

3.まとめ

 

今後、研修費用や資格取得費用の会社負担を検討される場合には、上記を踏まえて検討することが必要です。会社負担にする内容と個人負担となる内容を明確にし、就業規則にあらかじめ記載し、全員に説明することが重要です。

その他にも学んだことをアウトプットさせる場や、より理解を深めるための実践の場を構築することも検討しておく必要があります。

せっかく会社で費用を負担したのであれば会社に還元される仕組みを作りましょう。

 

福島会計では様々な税務相談を承っております。個別判断が必要な内容であれば弊社までご相談ください。

 

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