• 2021.06.09

業務上横領が発覚したらどうする?どうなる?

 

スタッフの西川です。

 

本日は、少し物々しいですが「業務上横領」についての税務上の取扱いを中心に採り上げたいと思います。

 

現預金管理というのは会社経営の根幹となりますが、業務上横領の多くは、その現預金管理(体制)の甘さが引き起こすものです。

業務上横領の起こりうる類型については、ここでは割愛させていただきますが、発覚のケースとして以下の3つに分類できるかと思います。

 

1.自社内の監査機能や内部告発により、不正が発見されるケース

多くのケースがこちらに該当すると思われますが、ある意味で“健全”なケースと言えます。

  

2.得意先や取引先、税理士など、内部事情を把握できる外部の人間から指摘されるケース

すぐに発見できるものではないものの、“進行中”の事象を発見することもあるため、会社にとっては非常に助かるケースです。  

 

3.税務調査などの公的な調査で発覚するケース

社内・社外でも気付けなかったケースで、“傷口”が広がってしまっている可能性があります。

 

業務上に限らないものの、日本における年間の横領事件の認知件数は1,000件以上発生しています。

 

 <参考>令和元年の刑法犯に関する統計資料|令和2年8月警察庁

 

万が一、会社内で業務上横領が起きてしまった場合、被害を受けた会社はどのような税務上の取扱いとなるのでしょうか。

以下に、簡単な事例を基にした注意点を挙げたいと思います。

 

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【⓪事例】

毎月の売上金から、10万円ずつ抜き取り、1年間で120万円を着服していたことが発覚したケース

 

【①修正処理】(単位:万円)※発生年度の違い等は考慮していません。

a.現預金   120 / 売上    120

b.横領損失  120 / 現預金   120

c.未収入金  120 / 賠償金収入 120

 

会社としては、横領された売上金120万円について、売上に計上(a.売上)すると同時に、同額が着服(b.横領損失)されているので、いわゆる“いってこい”の関係になりそうですが、着服(b.横領損失)されたものと同額の損害賠償請求権(c.未収入金)という利益を得ていることになります。

結果として、120万円というお金が手元から無くなっているにも拘らず、120万円の利益が残ることになります。

 

【②損害賠償請求権の取扱い(税務上の注意点)】

着服された金額と同額の損害賠償請求権については、着服した者が役員か従業員かによって取扱いが異なるものの、貸倒れの要件を満たさない状況で債権放棄(免除)をしてしまうと税務上は「給与」として取り扱われ源泉所得税や、それに係る延滞税、加算税といった税負担が生じてしまうことになります。

相手が役員であれば、その役員給与自体が損金として認められず、ダブルパンチとなりますし、上記の「3.税務調査」で発覚してしまうと、“所得隠し”(仮装・隠蔽)などと言われてしまうことも想定されます。

 

会社としては、業務上横領の被害者であるにも関わらず、そう指摘されてしまう理由は、役員・従業員も会社の一員であり、横領自体が会社の行為と判断されてしまうからです。

 

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このように、世の中で意外と起きてしまっている横領事件は、起きてしまうと色々な問題に発展してしまうことには注意が必要です。

 

自分の会社は大丈夫!!と言えるかどうか、怖くなってしまうかもしれませんが、不正を未然に防ぐ体制の整備という観点と、万が一に備え、早期発見ができるチェック機能の整備という観点が重要です。

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